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「オルカの帰る島」


「オルカの帰る島」 (古いノートから)

深夜のTV、何気なくチャンネルをCSに切り替えたら、シャチの群れがのんびりと泳ぐ映像が流れていた。                ”The island where Orca return”(2007/2/12 CS TV)

そういえばその昔よく聴いていた衛星デジタルラジオ(St.GIGA)がこんな詩を紹介していたなぁ、と思い出し、急いで抽斗の中からメモを探し出した。

「ウオーター・オデッセイ」

なぜ帰ったのだろう 海ヘ

遠い昔  わたしたちは

ともに陸を目指して 海を離れた

それなのに なぜ海へ帰ったのだろう

オルカは

わたしは 陸のうえで

二本の足で立ち上がり

自由になった手で 道具をつくった

道具は 力を産み

力は わたしを自由にした

武器をつくり

都市をつくり

空を飛び

海に潜り

きみは なにを見ているだろう

なにを感じ なにを思い

なにを歌っているのだろう

海で

遠い時間を隔てて

わたしたちは 再び出会った

まるで 異なる星で生まれ育ったように

わたしたちの言葉は 通じない

けれど ともに陸を目指した兄弟だから

きっといつか わかりあえる

そうしたら教えておくれ

オルカ

きみはなぜ 海へ帰ったのか

そんなにも美しく自由なのか

わたしは

月にまでたどりつき

数式を操り

宇宙のはじまりをのぞぐ

けれど それで

ほんとうに わたしは

自由になったのだろうか

オルカ

生まれ故郷の海を目指した者たち

歌いながら 海を泳ぐ

星々の間を 泳ぐように

必要なだけ食べ

海草で遊び

子どもたちを育てる

この惑星の なにひとつ

けがすことなく

ー from Voice of St.GIGA *

 オルカを愛する長束芳彦氏(CG作家)によるとー

”オルカ(Orca)”とはシャチのことで、学名のラテン語Orcinus Orca(オルキヌス・オルカ)に由来する。

世界中の海に分布し、人間以外の敵を持たず、鮭やニシンなどの魚はもちろん、果ては自分よりも大きなクジラをも組織的に攻撃することから、かつてはどん欲で残忍な動物と考えられていて、不名誉な呼び名"KillerWhale"(殺し屋クジラ)もそんなところからきているのだろう。

だが、実際には自分たちが生きる環境の中で最も入手しやすい生物を独自のやり方で捕食するという、生息する環境毎に編み出されたその独自の生活スタイルは、オルカの文化とも言える。最近では多くの研究者の努力により、彼等が複雑な社会と繊細な感覚を持った生き物であることが明らかとなっている・・・。

   http://www.asahi-net.or.jp/~AR5Y-NGTK/screen31.htm

かつてはそんないわれのない誤解に満ちた生きものだったオルカ。

もしかしたら、彼らは人間の心の奥深くにも住んでいて、自分たちもいつの日にかオルカになれることを夢見ながら追い求めているーあるいはそんな存在なのかもしれない。

* St.GIGAには15年ほど前の開局時に放送局の見学に行ったことがあるが、それは世界初の衛星デジタルラジオで、 コンセプトは潮の満ち引き、月の満ち欠けをもとに番組を編成し、曲紹介もCMもなく、流れるのは心地 よい音楽と自然音のみというユニークなものだった。

その後紆余曲折があって、現在は残念ながら電波を発していない。今も熱烈なファンがいて、その応援サイトで復活の署名運動をしている。

 *『うけうり日記』から (2007年2月13日火曜日)

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